株式会社Booon
長崎県長崎市
【連携体】
- 長崎県養鶏農業協同組合
事業内容
本事業では、長崎県養鶏農業協同組合直営とグループ合わせて養鶏施設で年間約3万t生じる鶏糞を有効活用する手段として、長崎大学発のスタートアップである株式会社Booonが独自の機能性昆虫ミルワームを活用して、魚粉代替製品である機能性昆虫粉を開発、さらにはこれを原料とする水産養殖飼料を製造する。
国内において鶏糞は、完熟発酵ののちに有機肥料や水質良化剤として使用されてきたものの、生産者主体による全量の販売・処理には至らず、多くを有償での廃棄処分としていた。一方で水産養殖の現場では、魚粉の国際価格高騰の背景から飼料価格の値上げは前年比1.5倍にも及び、生産コストの値上げが販売価格に転嫁できず利益を圧迫している。そこで、本事業では完熟鶏糞を活用することで機能性昆虫ミルワームの製造、さらにはこれを原料とする水産養殖飼料の製造販売を目指す。
また、養鶏場から鶏糞を全量回収・処分するビジネスモデルが機能することで、廃棄物を原料とする再資源化のサーキュラーエコノミー実践が可能となる。
事業実施体制
新商品又は新役務の内容とその市場性・競争力
国内における昆虫養殖は主に食用としての生産であり、流通量が少ないために稀少性により付加価格が付いている産業構造となっている。一方で本事業は独自の環境コントロールによる養殖技術に特化した株式会社Booonが、環境負荷の高い鶏糞の廃棄問題を解消すべく、一次発酵処理を経た完熟鶏糞を原料として養鶏場併設で機械化・省人化による機能性昆虫ミルワームの効率的な生産を目指すものである。
昆虫養殖分野において生産設備の開発・飼料化の実証実験の事例は少なく、海外市場に遅れを取っている。本事業で生産するミルワームの成虫であるゴミムシダマシは、飛行しない甲虫であり管理コストが安いだけでなく、生育スピードも早く魚粉に対する成分比較でも十分な成分を保有している。
現状一般的に利用されている魚粉の国際価格は25万円/tであり、この価格を2割下回る20万円/t以下での販売を目指す。既存の飼料生産設備をシェアやOEMでの製造を行うことで配合飼料の形状で販売し、実際のユーザーとしては養殖飼料業者を想定している。
昆虫(ミルワーム)は素体の状態で、増肉係数2~2.5(廃棄物10トンに対して約4~5トンの生産が可能)であり、現在導入を検討している長崎県養鶏農業協同組合の直営養鶏場では、稼働時生じている月間2500tの鶏糞を1000t:8000万円相当の昆虫プロテインに変換可能となる。現在給餌検証中であるトラウトサーモンに加え、九州での生産量が多いブリ用飼料としての実用化・飼料化検証を目指す。
水産養殖市場、水産飼料市場、魚粉市場はいずれも成長産業であり、初期参入市場である魚粉市場は2030年までに2.5兆円規模に成長予定である。実際に世界における魚の水揚げ量をみると、漁獲による魚の水揚げ量に大きな変化はないものの、急速に養殖業が拡大し、今日では世界の漁獲高の54%を占めるまでに成長していることが分かる。特に魚食文化のあるアジア圏では、日本食の高級食材として広く普及していることから需要の伸びが進んでいる。
長崎県内の事業者に対して、より安価に飼料の供給が可能となり、同時に昆虫のフンは有機肥料としての利用も可能なことから、水産業や農業をはじめとする一次産業分野の支えとなりうる。
現在、株式会社Booonは長崎大学生協で生じる廃棄弁当を引き受け、ミルワームを飼育、飼料としてトラウトサーモンへ全量給餌している。現在は加工をせず素体の状態で魚に給餌をしているものの、本事業を通してより市場性の高い配合飼料に加工・給餌確認を進めていく。水産養殖飼料への加工に関しては2023年愛媛大学が魚粉の10%をミルワームに代替し鯛を飼育販売した事例から前例があり、また連携先である長崎大学服部研究室での飼育検証によりミルワームへの完熟鶏糞の給餌が確認されていることから、事業化実現可能は高いといえる。
地域活性化への波及効果
長崎県内においては養殖飼料の輸送コストが他地域よりも高く、養殖コストを押し上げている現状がある。そこで、飼料原料を現地調達し地産地消を促すことで、輸送コストを最小化し水産飼料製造コストをより安価に抑えることができる。これにより養鶏コスト・水産物の生産コストを抑えることが可能になり、競争力の高い一次産品の生産が可能となる。水産業が盛んな長崎における拠点モデルを基に、同様の物流コストの高い遠隔地においても、より安価な飼料供給を可能とする。また、環境負荷の低い製品として国際競争力の強化も期待される。
代表企業等の連絡先
株式会社Booon
所在地:長崎県長崎市油屋町1-1
電 話:070-8454-7099
FAX:
HP:https://booon.co.jp/
採択日:令和5年8月8日